ホームページ更新用のソフト(CMS、Webサイト更新ツール)のうち、ブログソフトである「WordPress(ワードプレス、WP)」をカスタマイズしてホームページ更新に利用する方法と、「すぐ使えるCMS」でホームページを更新する場合の違いをご案内します。
どちらかが常に優れているという訳ではなく、時と場合によって使いどころが違うツールです。
基本的な使い分けガイドライン
更新対象範囲による判断
まず、「すぐ使えるCMS」が有効に使えるシチュエーションは、更新頻度が高くツールの導入が本当に必要なのはWebサイトの中の一部だという場合です。例えば頻繁にWebから更新したいのは「お知らせ」と「製品紹介」だけで、それ以外のページは時間を掛けてWebデザイナかWeb制作業者が更新する、というような場合です。
サイトの全ページをWebから更新できるようにしておきたいという場合は、「WordPress」の方が向いています。
WordPress | すぐ使えるCMS | |
---|---|---|
更新したい場所 | Webサイト全体 | Webサイトの一部分 |
費用と要望による判断
次に、掛けられるコスト(費用や時間)と求める機能から考えると、「何が何でも無料。無料なら多少の事は我慢する」という事であれば、「WordPress」が適しています。また、「コスト(本格的な開発のための費用と時間、そして、導入後のメンテナンスのコスト)を掛けられるので思い通りの高機能なものにしたい」という場合も「WordPress」の方が向いています。
「すぐ使えるCMS」はこの中間の、「ある程度やりたい事があるけれど、カスタマイズや、導入した後のセキュリティ対応に費用や時間を充分に割く事ができない」という場合に適しています。
動作環境による判断
また、新たにサーバを調達しWebサイトを構築する場合は実質的に殆ど差がありませんが、既にホームページを運用していてサーバ機能が決まっている場合、動作環境もツール選択の際の判断材料になります。ツールを使うための環境が整っていない場合は、CMSの導入のためにサーバ移設も必要になります。
「WordPress」の場合はデータベースが使える事や php のバージョンがチェックポイントです。「すぐ使えるCMS」の場合は、Perl が使えるかのみがチェックポイントです。
これは、一旦導入したCMSを移設する場合も同じです。
WordPress | すぐ使えるCMS | |
---|---|---|
必要な動作環境 | php・データベース | Perl |
比較のポイント
これらの判断のポイントになる要素を以下に詳しくご案内します。
デザインカスタマイズの難易度
WordPress | すぐ使えるCMS | |
---|---|---|
デザイン設定 | プログラムとHTMLが混合 | HTMLテンプレート |
「WordPress」はインストールは非常に簡単ですが、いざカスタマイズしようとした場合はツール特有のファイル配置が分かった上で、それらの設定ファイルをWebの管理画面から編集する必要があります。またそれらの設定ファイルはプログラムコードとHTMLコードが混ざった形になっていますので、変更したHTMLコードをプログラムコードの間に挟み込んで行く作業が必要になります。
このような作業は、Webデザインだけでなく技術的な知識を持った方が必要ですので、この作業に自信が無い場合は「すぐ使えるCMS」の方が適しています。
「すぐ使えるCMS」は通常のHTML編集ツールで編集したファイルを、最大2分割して設定ファイルにコピーする事でデザイン変更を行います。プログラムコードとは完全に分離されていますので、Webデザイナの方でも比較的プレッシャー無く変更が可能です。
機能カスタマイズの可否
機能カスタマイズについては 「WordPress」はプログラミングができる方であれば自分でカスタマイズできます。「すぐ使えるCMS」はお客様によるプログラムのカスタマイズはご遠慮頂いておりますので、機能のカスタマイズをご希望の場合は有料になります。
WordPress | すぐ使えるCMS | |
---|---|---|
プログラムのカスタマイズ | 自由 | 有料 |
また、「すぐ使えるCMS」は基本的な料金を下げられるように機能を絞り込んであらかじめパッケージ化していますので、ここに機能を追加しようと思っても場合によっては却って複雑で料金が上がってしまったり、機能追加そのものができない場合もあります。
これが、思い通りの高機能なものを望まれる場合は、「すぐ使えるCMS」をあまりお勧めしない理由です。予算が潤沢な場合や担当者が凝り性だという場合も、最初は「すぐ使えるCMS」で対応できそうだったものが話が進むうちに大規模化して対応可能範囲を超えてしまう場合もありますので、「これから予算を決める」という場合はスクラッチ開発をお勧めします。
データベースの有無
「WordPress」を使うにはデータベース(※1)が必要ですが、「すぐ使えるCMS」はデータベースの使えないサーバでも使えます。
※1 データベース=大量のデータを保存するためのソフト。「MySQL」や「PostgreSQL」など。
WordPress | すぐ使えるCMS | |
---|---|---|
データベース | 必要 | 不要 |
保存件数 | 大量 | 上限あり |
これは一方では、「すぐ使えるCMS」の方がより広範囲なサーバで動く事を意味します。例えばデータベース機能の付いていない安価なレンタルサーバや、逆に、セキュリティ要件が厳しく管理されていてデータベースが稼働できないサーバなどにもCMS導入が可能です。
他方、保存可能なデータ量に限りが出ますので、1000件、2000件と、記事を保存したい場合は「すぐ使えるCMS」は不向きです。
IIS(Windowsサーバ)、イントラネット対応
WordPress | すぐ使えるCMS | |
---|---|---|
IIS・イントラネット | 非推奨 | 標準対応 |
「すぐ使えるCMS」は Perl の CGI が動く環境であれば稼働できます。IIS(Internet Information Service)や、技術者が直接サーバにアクセスできないイントラネット環境でも稼働実績があります。
「WordPress」もWindowsサーバで動作可能ですが、技術者が直接プロジェクトに関わっていないと稼働までのハードルが高いかもしれません。
一般的にWindowsサーバは外部からのメンテナンスが難しいので、イントラネット内など外部からアクセスしにくい場所にサーバがある場合は特に、導入後もファイルのコピーだけでメンテナンスが可能な「すぐ使えるCMS」には利があります。
ファイル書き出し方法とWebサイトの速度
WordPress | すぐ使えるCMS | |
---|---|---|
ファイル書き出し | 動的 | 静的 |
WordPress はページの動的表示(※2)を行います。「すぐ使えるCMS」は静的HTMLを書き出します。このファイル書き出し方法の違いにより、2つ判断ポイントがあります。「速度」と「構成の自由度」です。
※2 「動的表示」とは、ホームページにアクセスがあった時に毎回プログラムが動いてページを表示する方式です。
Webサイトの速度
WordPress | すぐ使えるCMS | |
---|---|---|
表示速度 | アクセスが集中するとサイトが遅くなったり、最悪の場合サーバがダウンする | 高速 |
判断ポイントの一つは、アクセスが急激に増加した時のWebサイトの反応速度です。動的表示を行う場合はホームページにアクセスがあった時に毎回プログラムが動きます。このため、急なアクセス増加の際にはWebサーバの処理の負担が増え、表示が遅くなったり表示ができなくなったりする可能性があります。静的HTMLを書き出しておく場合は、プログラムは編集する時だけに使います。このため、ホームページへのアクセスが突然増加した場合もサーバが高速で反応します。
このため、アクセスが増える場合があるのにそれに見合ったサーバ投資ができない場合は、静的書き出しができる「すぐ使えるCMS」を選んだ方が、Webサイトの反応速度が上がります。
構成のバリエーション
WordPress | すぐ使えるCMS | |
---|---|---|
公開サイトと編集サーバの分離 | 不可 | 可能 |
ファイル書き出し方法に起因する2つ目の違いは、構成の柔軟さです。
「すぐ使えるCMS」の場合は静的書き出しされるHTMLファイルのディレクトリがプログラムとは完全に分かれています。このため、セキュリティ対応のために公開サーバにはプログラムなどをインストールできない場合にも、編集用の別サーバにCMSをインストールし、その後書き出したファイルを公開サーバに転送する(※3)という構成でのCMS導入が可能です。
「WordPress」の方は常に、公開サーバに直接データベースやプログラムをインストールする必要があります。
※3「すぐ使えるCMS」とは別に設定が必要です。
運用セキュリティとコスト
WordPress | すぐ使えるCMS | |
---|---|---|
常駐の技術的管理者 | いた方が望ましい | いなくても平気 |
この他の重要なポイントして、セキュリティ上の配慮が挙げられます。「WordPress」はホームページ内に設置する時のURLが決まっているため、プログラムの不具合個所(セキュリティホール)を狙った攻撃やスパム投稿を受ける場合があり、実際に、大規模な改ざん被害も起きています。このため一度導入すると、攻撃を受けていないかのアクセスログのチェックや頻繁なプログラムアップデートが必要になり、これはコスト(費用や時間)として考慮しておく必要があります。
「すぐ使えるCMS」では設置する場所を自由にカスタム設定できますので、画一的な攻撃を受ける心配がありません。頻繁なバージョンアップも不要です。このため、セキュリティ対応のための継続的なコストは不要です。
「WordPress」と「すぐ使えるCMS」の使い分けのまとめ
WordPress | すぐ使えるCMS | |
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使いどころ |
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